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礼拝メッセージより
9.11
今日はカープの優勝セールの日でもあり9.11でもある。あれから何年たったのだろうか。先日もビルに飛行機がぶつかる映像を見た。あのビルにいた人達の無念を思うと胸が痛む。どうしてあの人達が犠牲にならないといけないのか、そんな答えのない問がわいてきた。
不条理
先週演奏会で福島の詩人の和合亮一さんの詩による歌を中心に歌った。福島から和合さんも来てくれてステージでインタビューもした。その話しを袖から少し聞いていたのだが、その中で不条理という言葉が印象に残った。
地震と津波に襲われて、放射能まで降ってきた。突然の災害で命を奪われた人もいる。これから先ずっと放射能に怯えて生きていかなくてはいけなくなった。一体私がどんな悪いことをしたのか。どうして私がこんな目に遭わなくてはいけないのか。そんな不条理を背負わされて和合さんや福島の人達は生きているんだなと思わされた。
不条理は他にもいっぱいある。どうしてあんな良い人が早く死ぬのか、どうしてあんな酷い目に遭わないといけないのか、そんな風に思うこともある。神を信じているのにどうしてこんなことになるのか、神はどうしてこんなことを許すのか、神も仏もない、そんな風に思うこともある。
純粋に神を信じる者を幸せにして、一所懸命に祈る人こそ助けるべきじゃないのか、それこそが正義なんじゃないのかと思う。しかしどうも世の中そうとも限らないようだ。不条理が満ちていて、一体神はどこにいるのかと思うことも多い。
裕福な女
ある日シュネムを通るエリシャを食事に誘う裕福な女性がいた。エリシャはそこを通る度にそこで食事をするようになった。彼女はエリシャが聖なる人だと分かったので、階上にエリシャのための部屋を作りましょうと夫に言って部屋を作った。世話になったエリシャは女性のために自分にできることはないかと問うが女性はなに不自由なく暮らしていると答える。そこでエリシャは自分の従者であるゲハジに何をしたらよいかと問い、彼女には子供がなくて夫も歳を取っていることを知る。エリシャは彼女に来年の今頃はあなたは男の子を抱いていると告げる。女性はからかわないでくれというようなことを言ったようだが、翌年に男の子を産む。その子が大きくなったある日、刈り入れをする時に頭が痛くなったので、父は従者に母親のところへ抱いていってくれるように頼む。母親のところへ連れて行かれた子は母の膝の上で死んでしまう。母親は子供をベッドに寝かせてエリシャのもとへ向かう。夫にはただ神の人に会いに行くとだけ言って献げ物を持って出掛ける。そこからが今日の聖書の箇所になる。
エリシャは子供のことを知るとゲハジに自分の杖を持たせて先に行かせたが子供は目を覚まさなかった。後で到着したエリシャが祈り子供の上に自分の覆い被さると子供が生き返った、という話しだ。
祈ればいつも子供が生き返り、祈ればいつも病気が治ればいいのにと思う。この聖書に書いてあるようになれば良いのにと思う。しかし現実はなかなかそうはいかない。自分の思い通り、願いどおりにはなかなかいかない。
聖書には生き返ったとか病気が治ったという話しがいっぱいある。奇跡と言われる話しがいっぱいある。しかし実際に子供が死にそうな時に祈っても祈っても聞かれないときもある。そうするとどうして自分の子供は助けてくれないのか、神はどこにいるのか、神はいないのかと思うんじゃないだろうか。
突き抜けて
一所懸命にやってるのに報われない、一所懸命に信じているのに災難や面倒なことばかり、正直者が馬鹿を見るような不条理がこの世にはいっぱいだ。子供が病気で亡くなるなんてどんな不条理だと思う。この女性の子供は生き返ったのに、どうして自分の子供は死んだのかと思うんじゃないのかと想像する。
まるで不条理な世界に生きる私たちを神は放ったらかしにしているんだろうかと思う。
不条理の世界でうずくまるしかないような私たちの人生だけれども、そこを突き抜ける希望がある、そのことをこの物語は告げているんだろうかと思う。不条理の世界の中に一縷の希望を見いだした人達の証言が聖書になっているんじゃないかと思う。
祈れば子供が生き返ったり病気が治ったりなんてことはなかなか起きない。奇跡はなかなか起きない。しかし思うようにいかないことばかりの人生だけれども、そこにも必ず希望はある、希望は与えられる、そのことを伝えようとしているような気がしている。そんな希望、不条理を突き抜ける希望を神は私たちに与えてくれる。なかなか思うようにいかない人生を生きる力を与えてくれる。実はそれこそが一番の奇跡なんじゃないかと思う。
神は私たちの周りの状況を変えることよりも、私たちの心、私たちの思いを変える、つまり不条理な世界に生きている私たちの心の中に、不条理を突き抜けて希望や安心、喜びを与える、そういう仕方で私たちを支えてくれているんだろうと思う。