前 へ
礼拝メッセージの目次
次 へ
礼拝メッセージより
「どんな時も」 2013年9月22日
聖書:エステル記 4章1-17節
王妃
ワシュティが失脚したのち、全国から美しいおとめが集められることとなった。
当時、ペルシアの首都であるスサに一人のユダヤ人がいた。ベニアミン族の家系で、かつてエルサレムから連れてこられた補囚民の子孫だった。
このモルデカイはペルシアの役人になっていたらしい。そして両親を亡くしていた、いとこのハダサ、別名エステルを自分の娘として引き取っていた。エステルは美しかったらしく、王宮に連れていかれることになった。モルデカイ自身が王妃の候補として連れて行ったのか、あるいは他の役人が見そめて連れて行ったのかはわからない。
集められた娘たちは12ヶ月の間後宮で磨きをかけられ、その後順番に王のもとに召された。そしてエステルは王に気に入られて王妃になることになった。エステルはモルデカイに命じられていたので、自分の属する民族と親元を明かさなかった。
宮廷日誌
「さてそのころ、モルデカイが王宮の門に座っていると、王の私室の番人である二人の宦官が何事かに憤慨し、クセルクセス王を倒そうと謀っていた。」(2:21)とエステル記にそのまま書いている。おとぎ話でも何事だったのか位は書いてそうなもんだけど何事かとしか書かれていない。まあそれはいいけれど、モルデカイはその企てを知ったのでエステルを通して王に告げ、その件は捜査されて宦官は処刑され、この事件は宮廷日誌に記入される、ということがあった。
ハマン
その後、クセルクセス王はアガグ人のハマンを引き立てて大臣のだれよりも高い地位につけ、王宮の門にいる役人はハマンが来るとひざまずいて敬礼するようにと命じた。ここもどうしてハマンが高い地位についたのかという説明をしてくれればいいのにと思う。
しかしモルデカイはハマンにひざまずかず敬礼しなかった。どうして王の命令に従わないのか、と周りから何度も指摘されてもしかなった、と書かれている。
そのことに腹を立てたハマンはモルデカイがユダヤ人であることを知ると、モルデカイだけではなくユダヤ人を絶滅しようとした。
ハマンは絶滅の日をプルと呼ばれるくじを投げて第12の月と決めた。このくじを投げたのが第1の月だったので1年ほど先ということになる。勝手に絶滅の日を決めておいてから、王に対して、独自の法律を持って王の法律に従わない民族がいる、こいつらを根絶しましょう、その代わり銀貨1万キカルを国庫に納めます、と王に進言した。王はハマンに全てを任せることにして、そこでユダヤ民族を絶滅する命令が全国に出された。
説得?
そこからが今日の聖書の箇所になる。モルデカイはこのことを知ると衣服を裂き、粗布をまとって灰をかぶる、というユダヤ人のいつもの嘆きを表す方法で苦悩に満ちた叫び声をあげた。これはユダヤだけではなく中東ではよく行われていた振る舞いだそうだ。また国中のユダヤ人たちも同じように嘆き断食し涙を流した。
その後エステルはモルデカイから事の次第を知らされ、王に寛大な処置を取るように嘆願してくれ、と頼む。しかし王に召し出されずに近づく者は王の許しがなければ死刑になるという定めがあり、王に会いに行くのも命がけなんだと説明する。
そうするとモルデカイはエステルに、自分だけ王宮にいて無事だなどど思うな、お前が黙っていたらお前も父の家も滅ぼされるに違いない、お前が王妃になったのはこの時のためだったんだ、という返事を送った。
そこでエステルは、スサにいるユダヤ人を集めて三日三晩断食してくれ、自分も同じように断食し、死を覚悟して王に会いに行くと言った、という話しだ。
なぜ?
モルデカイはなぜハマンに敬礼しなかったのか。よく分からない。主なる神さま以外にはひれ伏さないという信仰心からだという説や、ハマンがアガグ人であったと書かれていて、それはかつてサムエルが打ち殺したアマレク人の王アガグの子孫と思われるから、要するに先祖が敵同士だったからだとかいう説もあるらしい。
でもこの時代にそんなこと言ってたら外国で生きていくことなんて出来ないんじゃないかと思う。やっぱりモルデカイは権力争いというか出世争いでハマンに負けてしまって、ハマンの方が王に重用されることになったという妬みから、それが王の命令であろうとハマンにひざまずかず敬礼しなかったんじゃないかと想像する。
そんなモルデカイに周りの役人たちが、「なぜ王の命令に背くのか」と言ったとも書かれている。お前の気持ちも分かるけれども、王の命令なんだから背くとやばいぞ、という忠告なんだろう。モルデカイは自分ならば許されるだろうというような気持ちがあったのかもしれないなあと思う。
言わばそんなモルデカイの出世争いに負けたという嫉妬から始まった個人的な反発から、ユダヤ民族が滅ぼされる危機へと発展してしまった、そういう事件だったんじゃないかと思う。
説得?
またモルデカイはエステルが王に会うのも命がけだと言った時に、自分は王宮にいて無事だと考えてはいけないとか、黙ってたらあなた自身と父の家は滅ぼされるにちがいないとか、この時のために王妃になったのではないか、なんてことを言っている。
エステル記4章の新共同訳聖書の小見出しには、「モルデカイ、エステルを説得する」と書かれている。説教をいろいろ見ても、多くの人がモルデカイがエステルを励ましたと書かれていた。
これって本当に励ましなんだろうか。普通に読んだら脅迫じゃないかと思うんだけど。
モルデカイはハマンに対する個人的な嫉妬から、ハマンにひざまずかず敬礼しなかった、それなのにいつのまにかユダヤ民族全体が滅ぼされそうになってしまったという思わぬ展開に慌てふためいているという気がする。だからこそエステルに対して何としても王に助けを求めるようにと、半ば脅迫さながらにお願いしたのだろう。
絶体絶命
エステルは自分から王に会いに行くという命がけの行動を求められて最初は躊躇した。いきなり命をかけろなんてこと言われてもそうそう従えないだろう。モルデカイはこんな時のために王妃になった、なんて言ったけれど勝手な言い分だ、と思ったかもしれない。勝手な言い分と分かりつつ、でもそれほどに切羽詰まった絶体絶命の状態であること、そしてそれを打開する可能性があるのは自分しかいない、ということで王に会いに行くことにしたのだろうと思う。
そしてエステルはユダヤ人みんなに3日間断食するしてくれと頼み、自分も断食すると言った。断食して神に祈る、神の助けを求めるということだろう。
モルデカイは灰をかぶって嘆いているだけみたいだが、エステルはみんなと一緒に祈ることにした。その祈りの中でエステルは今後どうしたらいいかという知恵と勇気を与えられたのだろうと思う。エステルは信仰的だな。
エステルは、定めに反することではありますが私は王のもとに参ります、なんて言っている。モルデカイが王の定めに逆らって招いた危機を、今度は自分が定めに反することをして救い出しに行く、と言ってるかのようだ。あなたが定めを破ったために招いた危機の、今度は私が定めを破って命がけで尻ぬぐいをしに行くんですよ、と義理の父であるモルデカイに釘を刺したのかなと思う。
どんな時も
この出来事がモルデカイが神にしかひれ伏さないという信仰的な問題から敬礼しないことから、つまり神を信じて行った出来事から起こった危機を神が守ってくれた、ということならばそれはそれで筋は通っているし立派なお話しだとは思う。
でもそうじゃないような気がしている。一人の人間のプライド、虚栄心、妬み、そんなことが発端となった事件だったんじゃないかと思う。ただお前の責任で起こった出来事だ、そんなこと知ったこっちゃない、と神から言われても仕方ないようなことだったんじゃないかと思う。けれど神はそんなことのために陥った危機をも神は守られた、そんな時の祈りも神は聞かれている、ということを教えているんじゃないかと思う。危機に直面した時には、その原因が何であれ、苦しみもだえる祈りを神は聞いてくれているということなんだろうと思う。
立派に信仰的に生きている時にしか神が祈りを聞いてくれない、助けてもくれない、となったらそれはもう大変なことだ。夢も希望もなくなる。
でも神はたとえ全く自分の所為で困難に直面したような時でも、私たちの祈りを聞いてくれ、私たちと共にいてくれて、私たちを見守ってくれている、そしてその困難を乗り越える知恵と力を与えてくれる、そのことを教えてくれているのではないかと思う。
降って湧いたような災難もあるけれど、それよりも自分で招いた災難や自分が原因である苦難の方が遥かに多いように思う。お前の所為なんだからと言われたら何も言い返せない。でも神はそんな私たちの祈りを聞いてくれる、聞いてくれているのだろう。そんな時でも、どんな時でも神は共にいてくれているのだ。