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礼拝メッセージより
「あきらめないで」 2013年8月11日
聖書:ダニエル書 2章31-49節
夢
夢を解くと言う話しは、創世記のヨセフの話しにも出てくる。普通夢を解く時には、どんな夢なのかを聞いてそれを説明するけれども、今回のネブカドネツァル王の夢を解く話しでは、王の見た夢さえも教えられないのにそれを解け、という無茶な命令を出された所から始まる。
王は賢者たちに自分の見た夢を言い当てろ、そしてそれを解釈しろ、できなければお前たちを八つ裂きにする、なんてことを言い出した。賢者たちは解釈するのでその夢を聞かせてください、と当然のように言う。しかし王は賢者たちに八つ裂きにされたくないために時間稼ぎをしているだけだ、夢を話して見ろ、と言った。賢者たちはそんなこと誰もできない、できるのは神だけだ、と答えるけれど、王は怒ってしまってバビロンの知者を皆殺しにしろ、と命令を出した。そういうことで侍従長が知者であるダニエルたち4人を探しに来た。そこで処刑されることになったことを知ったダニエルは2:16で、王のもとにいって、夢の解釈をするからしばらく時をくれ、と言った、と書かれている。
ダニエルがこのことを祈ると、夜の幻によってその秘密が明かされた。ダニエルは夢の解釈をすると侍従長に伝え、侍従長はダニエルを王のもとに連れて行った。2:25で侍従長がダニエルを王の元に連れて行って、ユダの補囚の男が夢を解釈すると言っています、と伝えたと書いている。その前の16節でダニエルが王のもとへ行って、ちょっと待ってくれと伝えた話しはどうなったんだろうか。
兎に角、そこで王に話した夢の内容とその解釈が今日の聖書の箇所だ。
巨像
王が見たのは、頭が純金、胸と腕が銀、腹と腿が青銅、すねが鉄、足は一部が鉄、一部が陶土でできた巨像だった。そして一つの石がその像の鉄と陶土の足を打ち砕き、足だけでなく身体全部が砕け、石は大きな山となり全知に広がった、そんな夢だった。
それに続いてダニエルが夢の解説をする。金の頭とはバビロニアのことで、
銀の胸と腕は2番目に興る国、青銅の腹と腿は3番目の国、鉄と陶土の足は4番目の国である、そして人手によらずに切り出され像を破壊した石とは、神が永遠に滅びることのない一つの国を興されるということである、とダニエルは話した。
それを聞いたネブカドネツァル王はダニエルを拝み献げ物と香を供えて、あなたたちの神がまことの神々の神、すべての王の主だと言った、という話しだ。
歴史
このネブカドネツァル王の見た夢がどの国のことなのか、ということだけれど、歴史的には、今のイラン北部にメディア帝国という国が興る。しかしメディアもペルシャ帝国に滅ぼされ、その後アレクサンドロス大王はマケドニア帝国をペルシャ帝国と同じような大きな国にする。このマケドニアはアレクサンドロス大王の死後にシリアのセレウコス王朝とエジプトのプトレマイオス王朝に分裂する。しかし後に政略結婚によって二つの王朝が結びつこうとしたけれども、一つになることがなかったそうだ。これは43節の、人々は婚姻によって混じり合います、ということとぴったりだ。
このダニエル書がまとめられたのは、ユダヤ人たちがセレウコス朝に支配されている時代だった。セレウコス朝のアンティオコス四世は、エジプト遠征の戦費をまかなうために、エルサレム神殿の財宝を略奪し、その後ユダヤに対する徹底的な宗教弾圧を開始した。律法の書を焼かせ、安息日や割礼などの律法に従うことを禁止し、エルサレム神殿や国内の各地にギリシアの神ゼウスの像を置いて礼拝することを強制し、ヤハウェを礼拝することを禁止した。そんな中でも偶像礼拝を拒否して、ヤハウェを礼拝することを固守した者たちは殺されてしまった。
そんな時代に生きる人達を励ますためにダニエル書はまとめられた。かつて自分達を苦しめて補囚していったバビロニアもやがては滅ぼされた。ペルシャも滅んだ。ペルシャと同じように大きな領土を持っていたマケドニアも分裂している。
どんなに強い国もやがては滅んでいくものであるということ、ダニエル書を読むユダヤ人たちはそのことを再確認したことだろうと思う。
神殿の財宝も持ち去られ、律法を守ることも自分達の神を礼拝することも許されずギリシャの神を拝むことを強制される時代だった。しかしそんな苦しい時もやがては終わるはずだ、どんな国だって滅んだように、自分達の苦しみもやがては終わる、そのことを思い出させるためにこのダニエル書はまとめられたのだろう。
あきらめないで
苦しみの中にある時にはその苦しみにばかり目を奪われてしまう。僕などはついつい悪い方へ悪い方へと考えてしまう。もうだめだ、どうしようもない、と諦めてしまい、なんて自分は駄目な人間なんだと思ってしまう。
でもダニエル書は、今は苦しい、しかしこの苦しみもやがて終わりがある、その後に新しい時代が来るのだ、神が新しい時代を来させる、そんな希望を与えようとしているのだと思う。
「私だけかね…?
まだ勝てると思っているのは………
あきらめる?
あきらめたら そこで試合終了ですよ…?」
安西監督(湘北バスケ部) 出典:『スラムダンク 第27巻』、井上雄彦
私たちの人生の中にも、もう駄目だ、諦めるしかない、と思うようなことがいろいろと起こる。
でも神さまは、大丈夫だ、諦めるな、私がいつも一緒についているじゃないか、私は諦めていない、そう言われているようだ。
だから目の前にある苦しみだけに目を奪われるのではなく、そんな苦しい中で耳をすませて、苦しい中でこそ聞こえてくる神の言葉を聞いていきたいと思う。