礼拝メッセージより

　エリヤは18章を見るとカルメル山でバアルの預言者450人とアシェラの預言者400人に対して、一人で対決し勝利した。そしてバアルの預言者たちを皆殺しにした。とても強い人間のように見える。
　このエリヤに対して、バアルの預言者を皆殺しにしたことを知った王妃イゼベルは、お前の命を奪いに行くと告げてきた。使者を送って、明日のこの時刻までお前が生きていたら、神々がわたしを罰してくれるように、と告げさせた。何とも恐ろしい伝言だ。
　これを聞いたエリヤは、カルメル山での勇ましい姿とは全く対照的にすぐに逃げた。そして荒れ野を一日歩き続けて、一本のえにしだの木の下にくると、もう私の命を取ってください、と神に語りかけている。

　エリヤって案外お調子者だったのだろうか。カルメル山で対決して勝利したことによって民は、主こそ神です、主こそ神です、と言ったと書かれている。そこでエリヤはついついいい気になって、バアルの預言者どもを捕らえよ、一人も逃がしてはならない、なんてことを言ってその勢いで皆殺しにしてしまったのかもしれない。神が皆殺しにするように命令している訳でもない。
　そもそも最初にエリヤがアハブ王に、わたしが告げるまで数年間雨が降らないだろうと言った時も、神がそうしろと命令したとは書かれていない。
　案外、神が告げるようにと言われてないのに告げてしまったり、殺せと言われてもないのに殺してしまったりというような面があったのかもしれない。そしてその結果命を狙われることになった。そうすると今度はもう命を取ってくださいなのだ。先ずは助けてくださいと願うんじゃないのかと思うけれど、いきなり命を取って下さいなのか。

　しかしそんなエリヤに神は御使いを送ってパンと水を届けてくれた。命を取ってくれというエリヤに対する神の答えということなのだろう。この御使いが誰なのか分からないけれど、とにかくエリヤは最後には神の山ホレブ、これはシナイ山のことらしいけれど、そこの洞穴に入った。かつてモーセが神と出会った神の山まで逃げてきた。そして洞穴に隠れることで少しは安心できたのではないか。

　そこで神は、「エリヤよ、ここで何をしているのか」と問いかけてきた。エリヤは、私は主に情熱を傾けて仕えてきた、なのにイスラエルの人々は契約を捨て預言者を殺した、残りはわたし一人だけで、わたしも命を狙われている、というようなことを語る。こんなに危機的な状況なんです、ということを語る。しかし主は、そこを出て山の中で主の前に立ちなさいと言った。
　その時主が通り過ぎて行かれた、と書かれている。そして主の御前には激しい風が起こり、地震が起こり、火が起こった。けれどもそこに主はおられなかった。何か特別な現象のなかに神がおられるようなイメージがあるけれども、あるいはエリヤもそう思っていのたのかもしれないけれども、そこに主はおられなかった。
　その後に静かにささやく声が聞こえたという。直訳では沈黙の声、沈黙の音だそうだけれど、ほんの小さな小さな声、声にもならないような音のようなものかもしれない。
　山の中で主の前に立ちなさいと言われていたけれども、その時には洞穴を出て行けなかった。風や地震や火が起こっても出ていけなかった。でも静かなささやきを聞いた時、彼は出て来た。

　その静かにささやく声を聞いてエリヤは洞穴の入口に立った。洞穴の奥に隠れて身を潜めていたであろうエリヤは、ささやきを聞いてやっと出て来た。
　そこで主はもう一度エリヤに問いかける、「エリヤよ、ここで何をしているのか」と。エリヤは、私は主に情熱を傾けて仕えてきた、なのにイスラエルの人々は契約を捨て預言者を殺した、残りはわたし一人だけで、わたしも命を狙われている、と1度目と全く同じ答えをする。
　しかし今度は主はエリヤに、来た道を引き返すようにと言い、具体的な指示をする。

　しかし命からがら逃げてきているのに、またそこに引き返すのは大変なことだ。エリヤはそこから引き返した。
　どうしてそんなことできたんだろうか。神と対話したことが良かったのかなと思う。何をしているのかと聞かれて、こんなに大変な状況で逃げてきてるんですと言っている。命からがら逃げ延びて恐くて隠れている、という自分の状況をここで見つめて直したのではないかと思う。調子に乗って余計なことまでしたためにこんなことになったということも、ここに来るまでずっと思い返していたのではないかと思う。
　でもそんな自分に神が語りかけてくれたのだ。逃げて隠れている情けない自分に神は尚も語りかけてくれている。そんな神の思いがじわじわと伝わってきたのではないかと思う。それが静かにささやく声だったのではないかと思う。

　逃げた所へ帰るのはちょっとやそっとじゃ決断できないことだと思う。エリヤもきっと相当迷って悩んだに違いないと思う。相当な勇気と覚悟がないとできないことだろう。

　それまではエリヤにとっての神は、自分が言ったとおりに干ばつになり、自分が言ったとおりに献げ物を燃やしてくれる、自分の言ったとおりに奇跡を起こしてくれる神だったのではないかと思う。
　でもこの逃亡を通して、神に対する見方が変わったのではないかと思う。自分の危機に際しても見捨てない、自分の失敗から落ち込んだ時にもずっと関わってくれる、そんな存在なのだと思うようになったのではないかと思う。
　だからこそ命を狙われている所へもまた戻っていけたんではないか。

　静かなささやきと通して神は私たちにも語りかけてくれているのだろう。案外私たちも、何もかもうまく行っている時よりも、失敗したり落ち込んだりした時の方がよく聞こえるのかもしれない。
　さあ、立ち上がるのだ、と言われているような気がする。

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