牧師のひとり言の目次
一 大 事
ホテルの結婚式で、緊張して呂律がうまく回らないで何回も言い直すなんてことがある。
そして最近どういう訳か、話し始めの言葉が出しづらい。特に式の最初の「皆さま、本日はまことにおめでとうございます」って言う時の「皆さま」がなかなか出ない。また出にくくなったらどうしようなんてだんだんと心配になってきて、そう思うと余計に緊張して出にくくなってきた。
緊張しないように、落ち着け落ち着け、なんて思うと余計にどんどん緊張が高まっていくようだった。実際は数秒だろうけれど、このままずっと最初の声がでなかったら一体どうなるのか、なんてことまで心配になるようなこともあった。
どうしたものかと思っていたけれど、少し前から、緊張してもいいじゃないかと思うようにした。緊張しないようにと思うんじゃなくて、緊張してもいい、上手く出せなくてもいいや、と思うようにした。今日も緊張するぞ、と思うようにした。そして今までだったらそんなことも恥ずかしくて誰にも話せなかったけれど、何人かにそのことを話した。すると真剣に聞いてくれた。
そうしたら緊張しなくなった、と言いたいところだけどそう簡単にはいかない。式の前奏が始まるとやっぱり緊張して心配になる。けれど少しは楽になったような気がしている。
声を出す、なんて誰でも当たり前にできることのような気がするのに、前までは普通にできていたのに、心配になるとそれさえも難しくなるんだなんてびっくりしている。
もし他の誰かからこんな話を聞いたとしたら、「そんなことで悩んでいるのか。気の持ちようだから心配するな、大丈夫大丈夫。気にしなければいいんだ。」って言ってただろうな、きっと。
他の人からはどんなに些細に見えることでも、本人にとっては「神さま、助けて下さい」って言うような一大事ってことがあるんだろうなと思う。