牧師のひとり言の目次
差し出す
最近物忘れがひどくて、なんていうことをよく聞く。歳を取ると記憶力が落ちてくるというけれども、記憶力にはものごとを覚えておく能力と、それを引っ張り出してくる能力とがあるそうだ。誰かの名前が出てこないという時でも、その名前自体を忘れている時と、覚えているのに名前が出てこない時とがあるそうだ。覚えていてそれを引っ張り出すことができて初めて記憶力が役に立つ。
私はこんなに知識を持っている、こんな優れた技術を持っている、こんなに愛情を持っている、こんなに篤い信仰を持っている、それは結構なことだ。そしてどれほどいっぱい持っているかということに目が向くことが多く、その多さを比べて優越感や劣等感を持ったりする。
しかし優れたものを自分の中にどれほどためこんでいても、それを必要な時に取り出せないとしたら何の役にも立たないだろう。持つことではなく誰かの為に差し出すとき初めて光を放つのだと思う。
愛は相手に差し出すときに本物となる、ような気がする。