牧師のひとり言の目次 

伝 染

 人は裸で生まれて裸で死んでいく、なんてことが聖書に書かれています。
 先日、エルサレムのことがテレビに出ていました。ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地であるが、それぞれに対立があった、そして今もある、というようなことが言われていました。自分たちの正当性を根拠に対立してきました。それぞれに自分たちの歴史や、自分たちの信じるものを子ども達に伝えていきます。
 テレビでは誰もが、やがて平和が来ると言っていました。しかしそれは一体いつになるんでしょうか。本当に来るのでしょうか。それぞれに自分たちの絶対性を主張するところに本当に平和は来るんでしょうか。どんな平和なのでしょうか。
 人は裸で生まれてきます。そこには宗教の対立も民族の対立もありません。大人達は裸の子どもに一体何を伝えているのでしょうか。敵意と憎しみでしょうか。それとも愛といたわりでしょうか。敵意や憎しみはすぐに感染し広がります。伝染させるのは前に生まれた人間です。
 最近の若者を見ていると、いったいどうしてしまったのかと思います。理解できないような事件を起こす者もいます。しかし私もそんな若者を育てた社会の一員です。誰もが感染していて、たまたま彼らが発病しただけのような気がします。
 悪者を責めるよりも先に、自分の中の病原菌を退治することが大事なような気がします。