牧師のひとり言の目次 

6月4日

 あれからもう10年になるそうだ。あの日は日曜日で、夕方になって教会から神学寮に帰ってきた。中国での民主化運動はどうなったかと思いテレビをつけた。ショックだった。天安門で軍隊が民衆に襲い掛かった、後に『血の日曜日』と言われるようになった事件の映像が映っていた。軍隊が自分の国民に向かって発砲した。軍隊というのは国を守るのではなかったのか。
 しばらくしてから、軍隊は国を守るが国民は守らない、と聞いた。天安門事件はまさにその通りだった。国を守るために軍隊が必要だと聞く。国を守るために軍隊は役に立つようだ。しかし国と国民とは同じではないらしい。一体国とはどこにあるんだろうか。国とは誰のことなんだろうか。国と国が戦争をする。でも一体誰が戦争をしているのか、しようとしているのか。
 敵はいつもどこか悪い国ということになっている。だからどこの国からもやられないようにしろと言われる。自分の国に誇りを持てと言われる。日本人は日本人らしく天皇や日の丸や君が代を大事にしろと言われる。
 国を守るために国民が一丸となって強い力を持たねばと言う。しかし力と力の争いは尽きることが無い。私たちの本当の敵はどこかの国ではなく、力で相手をねじふせようとする思いなのかもしれない。