牧師のひとり言の目次 

こっちとあっち

 以前ラジオである人の本を紹介していたのを聞いたことがあります。その人も本の名前も定かではないのですが、その本は元気のない人に向かって元気がなくてもいいんだよ、と励ましている本だ、と言ってました。
 そういえば元気のない人に元気出せとか、泣いている人に泣くな、なんていとも簡単に言ってしまうことが多いように思います。相手を無理矢理元気にしようとしていることが多いのかもしれない、と思います。そうすることが相手のためと思うのか、自分には相手を元気にできる力があると思っているからか、それとも元気のない相手では気に入らないからか、理由はよく分かりません。でもそれは元気のない人にとってはとてもつらいことかもしれません。もう動けないという人に、こっちへこいよ、と言っているような、自分はちっとも動かないで、動く元気のない相手を動かそうとしているようなところがあるのかもしれません。
 そういえば聖書にも「泣く人と共に泣きなさい」なんて言葉がありましたっけ。いっしょに泣くことは、泣いている人に寄り添っていないとできない、自分から泣いている人のところへ行かないとできないことのように思います。こっちへ来い、ではなく自分がそっちへ行くこと、それが相手にとっての力になるのではないでしょうか。
 元気出せ、泣くな、と言うのが言う側としては一番楽ではありますが。