牧師のひとり言の目次 

大 切

 最近は人の死に接することがめっきり減ったそうだ。確かに現実の人間の死に接することはほとんどなく、テレビや映画で見るくらいだ。中には次から次へと人が死んでいくようなものもある。だから近頃の若い者は命の大切さがわかってない、という声も聞く。確かにその通りなのかもしれない。
 子どもがいじめを苦に自殺したりすると、決まって物知り顔の大人が登場し「命が大切だ、命を大切に」と言う。「死ぬな」なんて言うのもいた。そんなことは耳にたこができるくらい聞いた。命は大切かもしれない、だけど俺自身が大切なのかどうかわからないんだ。どうも俺自身ではなく俺の命の方が大切らしい。命は大切だ、なんて言う時の命ってのは一体どこにあるの。そんな胡散臭い言い方はしないでほしい。
 命が大切だからお前の命も大切にしろ、なのか。いつまでたっても命令ばかりだ。
 「お前が大切だ」、誰かがそう言ってくれれば、それだけで生きていける。