牧師のひとり言の目次
死を見つめて
スペインの好きな俳優がある時、どうしてスペインなのかと聞かれた時にスペインには死がある、といったようなことを言っていました。スペインの人は死を意識しながら生きることを楽しんでいる、と言っていたように記憶しています。
日本で死を意識することはあまりありません。死を考えるなんていうと暗い人間だと言われそうです。誰もが死を嫌って、まるでいつまでも死なないかのように生きています。そして実際自分が死ぬということをほとんど考えることがありません。
しかし人生にはいつかは終わりがやってきます。死から逃れられる人間はいません。なのに死を考えないということは人生を誤魔化しているということかもしれません。架空の人生を生きているようなものです。現実を見ない、地に足のつかないうわついた人生です。帰るあてのない旅を続けているようなものです。
死があるからこそ、死を見つめているからこそ人は一生懸命に生きることができます。帰るところがあるからこそ旅は楽しいのです。
「この人たちは皆、信仰を抱いて死にました。約束されたものを手に入れませんでしたが、はるかにそれを見て喜びの声をあげ、自分たちが地上ではよそ者であり、仮住まいの者であることを公に言い表したのです。」(ヘブライ人の手紙11章13節)